【イベントレポート】池原真佐子× ピョートル・フェリクス・グジバチ 出版記念対談イベント@蔦屋書店 丸の内ラウンジ
【イベントレポート】池原真佐子× ピョートル・フェリクス・グジバチ 出版記念対談イベント@蔦屋書店 丸の内ラウンジ
5/10(水)蔦屋書店丸の内ラウンジにて、代表 池原の著書「女性部下や後輩を持つ人のための『1on1の教科書』」(日本実業出版社)と、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏の著書「心理的安全性 最強の教科書」(東洋経済新報社)の 発売記念イベントを実施しました。
2つの書籍に関連したいくつかのトピックについて、ピョートル氏と対談した内容をピックアップしてレポートします。
〈ピョートル・フェリクス・グジバチ 氏〉
連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。
モルガン・スタンレーを経て、Googleで人材開発、組織改革、リーダーシップ開発に従事。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。
2022年からGA technologies社外取締役に就任。
ベストセラー「NEW ELITE」他、「パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう」「世界最高のコーチ」など執筆。
最新著書は「心理的安全性 最強の教科書」「世界の一流は『雑談』で何を話しているのか」。ポーランド出身。
♦ 生産性の高いチームの会話・対話
ビジネスにおいて大きなゴールは、成果をあげること。その成果をあげるために生産性の高いチームを作りたいけどなかなか難しい、という悩みを持っている方は多くいらっしゃると思います。2人の考える生産性の高いチームの会話・対話とはどのようなものなのでしょうか?
- 自分のWillと組織やチームのWillとの重なりを見つけること
これはキャリア1on1の対話でとても大事なことです。働きやすさだけでなく、働き甲斐が持てるようになり、自発的な行動が増えて行動の質が高まります。
- 「内的自己認識」だけでなく「外的自己認識」も含めた会話が率直にできる
他者から自分がどう見えているかという「外的自己認識」にも触れていくことで、改善点や目標との差のフィードバックにつながることもあります。その際は、人に優しく、目標成果・結果には厳しくすることが大切です。
- 心理的安全性が確保された環境で、建設的な意見の対立が推奨されている
物事に対する見方のコンフリクトを健全にできるチームは、イノベーションが起きやすいと言われています。その前提として、言ったら嫌われないか、馬鹿にされないかという不安がなく、建設的に議論が交わせる雰囲気があることが必要になってきます。
対話とは建設的な会話のこと。対話の中から生み出せるものをみんなで必死に探って、目的やチームと決めたベクトルに沿って話し合える環境があるチームは生産性が高くなります。
♦︎目標を達成するために必要な心理的安全性
では、実際にその目標を達成するために必要な「心理的安全性」はどのように作り出せばよいのでしょうか?組織は人と人との関わりの中で作られているため、複合的な視点で見ることが大切です。管理職のみならず、社員ひとりひとりが心理的安全性について考えることが求められます。
- 部下も心理的安全性を作る責任があることを自覚する
自分がリーダーとどのように話しているのか、何かを言われた時にどんな反応をしたのかなど、振り返ってみることが必要です。その振る舞いが、もしかしたらリーダーの心理的安全性を下げてしまっているのかもしれません。
- 心理的安全性は技術で誰でも作り出すことができる
コミュニケーションのスキルを学ぶことで、心理的安全性を作り出すことができると考えています。社会人としてプロフェッショナルな振る舞いを意識し、ポジティブに振る舞う、言い方を考える、1on1の技術を磨くなどができます。
さらに、管理職になるとチームへの影響力が大きくなるため、心理的安全性を作り出すための話し方、聞き方、リアクション、人との雑談の仕方など、これらを作法として学び、意識することがとても大切です。
♦︎ マネジメントの悪い事例
フラットな組織がいいのか、トップダウンの組織がいいのかなど、どのようなマネジメントをすればよいのか悩む方も多いのではないでしょうか。ここでは、主に組織がうまくいかないポイントを中心に、具体的な事例について2人に聞きました。
- ボトムアップを重視しすぎる
一方的なトップダウンの組織はうまくいかないことは周知の事実ですが、逆にボトムアップを重視しすぎるのも成果は出にくくなると言われています。管理職は意見をまとめて進むべきベクトルを決めなければならないため、時にトップダウンの指示も必要になります。
- 部下の話を聞けない
リーダーになると陥る3つの罠があると言われています。
1つ目は「スピードの罠」。やらなければならないことが増え、ゆっくり話を聞いてる場合ではなくなってしまいます。2つ目は「プロフェッショナルの罠」。専門性が高まるため相手の話の内容が途中でわかってしまい、話の腰を折って最後まで話を聞けません。3つ目は「ナルシスティックの罠」。年齢が上がってくると自信が増してしまい、相手の話が聞けなくなってしまいます。
- 心理的安全性をケアしすぎて意思決定ができない
逆に、相手のメンタルケアをし過ぎることも良いマネジメントとは言えません。話を聞きすぎて意思決定ができず、嫌われる覚悟がないリーダーも悪い例のひとつです。
現場の話をしっかりと聞くプロセスは、情報収集のためだけでなく「自分の意見が受け入れられている」という心理的安全性を生み出す行為でとても大切です。そして、話を聞いた上で意思決定するのはリーダーの仕事だということを認識することが必要になってきます。
♦︎ 1on1がうまくいかない時の具体的解決策
1on1は周期を決めてとりあえずやっている、ということでは決してうまくいきません。自己開示ができない上司との会話は逆効果になることも。では、マネジメント側からの視点だけではなく、部下の側の視点も交えて1on1をどのように進めていくことが必要なのでしょうか。
- 1on1は部下のための時間である
マネジメント側の時間ではなく、部下のための時間であると認識し、それを伝えることが大切です。信頼関係がないとそもそも1on1はうまくいきません。「自分がここで主張できる」「自分が自分のマネージャーに聞ける」「自分が言える」という認識をして準備できることがこの文脈での信頼関係です。上から目線とか、態度がのけぞっちゃっているとか、そもそもまったく聞いてないとか、あと武勇伝、自分語り、自慢話を延々とする1on1は信頼がない対話になってしまいます。心理的安全性を考慮し、部下の話を聞く時間として設定しましょう。
- 自分が主張できる場だと認識して準備をする
部下の立場からすると、1on1は自己開示ができる場です。受け身になるのではなく、自分でアジェンダを作るなどして伝えたいことを整理し、自分を理解してもらい、自己実現をするために上司をうまく巻き込む積極性が必要です。
♦︎ 女性部下や後輩とのコミュニケーション術
性別問わず、部下とのコミュニケーションでどこまで踏み込んで良いのかわからない、と悩んでいる方も多いと思います。例えば、女性にリーダーを打診した際に自信がないと言われたり断られたりした経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのようなとき、2人はどのようにコミュニケーションを取っているのか聞きました。
- ジェンダーのバイアスなしに、人として捉えて対話をする
女性だから、男性だから、というバイアスを抜きに話をします。チームメンバーそれぞれのライフステージの課題を想定して、それらに共感を持って相手を理解することが必要です。
- 基本タブーはない、ただし条件がある
どこまで踏み込んで聞いて良いのかという質問に対しては、基本タブーはないと思っています。ただし、条件は「興味本位で聞かないこと」と「断る権利を与える」ことです。相手のキャリア形成を支援したいから質問することを前提に、答えたくなければ答えなくて良いということをセットにしておかなければなりません。
- 日本の女性がおかれた構造的な部分を知識として知っておく
なぜ女性の就業割合に対して管理職の割合は低いのか、それは本当に女性の能力だけの問題なのか、または女性が陥りがちな心理状態など、これらを個人と向き合う際の知識として知っておくこともこのテーマにおいては重要ではないかと思っています。
♦︎ まとめ
対談の最後には質疑応答の時間を設け、会場とオンラインともに多くの方からご質問をいただきました。管理職の立場から、社員ひとりとしての立場からなど、1on1での対話やチーム作りにさまざまな課題を持ち、日々試行錯誤されていることが伝わります。
このような書籍の著者である2人でさえ、人の話を聞くことはすごく難しく、鍛錬が必要だと痛感しているそうです。また、ジェンダーバイアスについての質問に関しては、無意識に日々の言動に出てしまっているという知識を持ち、それを意識して気をつけること、または仕組みで解決することも大切だと言います。
池原の著書「女性部下や後輩を持つ人のための『1on1の教科書』」(日本実業出版社)とピョートル氏の著書「心理的安全性 最強の教科書」をぜひお手に取っていただき、チーム作りのヒントにしていただければ幸いです。
最後に2人からのメッセージです。
(ピョートル氏)
「1on1や対話、チーム作りには好奇心と集中が大事になってきます。人を観察しないと本当の欲求・希望・気持ちはわかりません。好奇心・関心を持って集中して人と向き合っていけば、長期的に見て人間関係がとても良くなります。その人のために何ができるのか、どうすべきかを瞬間瞬間で判断し行動することが大切です。」
(池原)
「1on1によって人に向き合い、この人の中にどんなものが眠っているのか深く見ていくことは、みなさん自身の人生のキャリア、愛情のタンクが大きくなる作業だと思っています。人に向き合うことはその先にいる多くの人とも向き合い、社会を変えることにつながることだと思うので、1on1や心理的安全性を作り出すことを体感していただいて、みなさん自身の人生が豊かになることを願っています。」