【イベントレポート】5/18 【出版記念対談】 キャリア・能力評価・働く環境の「モヤモヤ」 その正体を知り、解決のヒントを探る

【イベントレポート】5/18 【出版記念対談】 キャリア・能力評価・働く環境の「モヤモヤ」 その正体を知り、解決のヒントを探る

 

 

「女性部下・後輩をもつ人のための『1on1の教科書』」(日本実業出版社)を刊行した代表・池原が、組織開発の専門企業おのみず株式会社代表で、「『能力』の生きづらさをほぐす」(どく社)を刊行された勅使川原 真衣氏をゲストにお招きし、2023年5月18日(木)オンラインZoomにて、対談イベントを開催いたしました。

登壇者それぞれの立場・経験から、現代に生きる私達が抱えるモヤモヤについて対談した内容をレポートします。

〈ゲスト:おのみず株式会社 代表 勅使川原 真衣氏〉

てしがわら・まい:1982年横浜生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。BCG、ヘイ グループなど外資コンサルティングファーム勤務を経て独立。2017年に組織開発を専門とする、おのみず株式会社を設立し、企業はもちろん、病院、学校などの組織開発を支援する。二児の母。2020年から乳ガン闘病中。
著書:「『能力』の生きづらさをほぐす」(/社会矛盾を可視化する教育社会学の視点を交えて、その実態をときほぐし、他者と生きる知恵を模索する。執筆には、人類学者の磯野真穂氏が伴走。子どもたちとの対話形式で、不気味に広がる「能力社会」の危うさに警鐘を鳴らす。

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<アジェンダ>
■お互いの本を読んだ上での感想・気付き
■働く上でのモヤモヤの正体とは?
■対談者、お互いの視点で聞いてみたい事
■ご参加者より、対談者へ質問
■まとめ
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♦ お互いの本を読んだ上での感想・気付き

・池原より>「『能力』の生きづらさをほぐす」(について

能力は生まれながら持ったもので、変えられない、自分には能力がないのでは?という劣等感を持っていたこと、勉強・学歴・資格がなければ能力開発はできないという考えによる生きづらさがあったことに気付かされました。また、このような考え方はどうやって作られてきたのかという時代背景も丁寧に紹介されており、腑に落ちました。会社が違うと、同じ能力に対する評価が変わった経験がありモヤモヤしていたが、それは固定された能力への評価ではなく、関係性の中で発揮し、育まれる「能力」だったのかと思い当たる節があった。昨今、自己受容が優先されがちだが、他者から見える自分という視点を持つことや、関係性を俯瞰してみるということの重要性を考えさせられました。

・勅使川原さんより>「女性部下・後輩をもつ人のための『1on1の教科書』」について

実際どうやって職場での関係性を育んでいけばよいのか?という問いに答えてくれる教科書になる本だと思います。仕事上での各場面ごとの対応や対話の仕方を懇切丁寧に、優しく示してくれている実践書であると感じました。各個人の素晴らしさをどう受け止め合い、どう鼓舞していくかという点でのフィロソフィーが互いに共通していると感じました。

♦︎働く上でのモヤモヤの正体とは?

ーそもそもモヤモヤとは?

池原:先が見えないという多数の不確定要素が固まってしまっている状態。副業、転職を含めた生き方の選択肢がありすぎるし、更に、その不安を1つ1つほぐして確認、内省する時間がないためモヤモヤを感じる人が増えているのではないでしょうか?

勅使川原さん(以下敬称略):面白いですね。納得です。あえて違う解釈があるとしたら、社会に感じる嘘くささ、二枚舌的な側面にモヤモヤを感じます。例えば、未来はわからないものであるのに予測を促したり、「ありのままの自分を受け入れよう」という反面、成功するための不足を指摘するなどの違和感であったり…。ある程度のモヤモヤはあって然るべきですが、それを吐き出す場所、受け入れてくれる環境がないように感じています。
だからこそ、メンターが必要になってくるのではないでしょうか。

池原:わかります。モヤモヤは作り出されている、ビジネスなのかなと感じることもありますよね。企業広告等含め、モヤモヤを常に喚起される環境。そこにも違和感があります。

ー専門家として、解を求められる事が多いと思うが、具体的にどんな相談を受けているか?

池原:人生の選択への解を求められるケースもあり、常に正解がほしい、間違えたくないという思いを感じます。自分も周りも、関係性も時代も常に変わっていく中で、すべてのモヤモヤをなくす必要はないのではないでしょうか。

勅使川原:巷のリーダーシップ論に重ね合わせ、自分はどうすべきか、本当の自分を曲げたくないと葛藤しているケースが多いですね。同じく、モヤモヤはあって当たり前、葛藤はなくせないと感じます。

♦︎ 対談者、お互いの視点で聞いてみたいこと

勅使川原:著書内にある実例は会社内に向けての例のように感じるが、会社内と会社外で対話の仕方は変わるのか?

池原:社内(必ずしも相性が良い訳では無い、身近、社内・業界の事情に精通している、普段の働き方に理解がある、評価に関係する)、社外(プロ、マッチングで相性が選べる、安心して本音が相談できる、社外ならではの知見が入る)で違いがあります。

勅使川原:実務が忙しすぎて部下と1on1の対話をする時間がない!にどう返答する?

池原:何のためにやるのか?を考えるべきではないでしょうか。中長期的な視点で捉えれば、部下の悩みや障害を聞き、チームのパフォーマンスをUP改善できる機会となるため無駄ではないはずです。

池原:職場内の悪い関係性、ねじれに気づくポイントは?

勅使川原:健全ではない違和感(発言の少なさ、会社に行くときに感じている消耗感、徒労感etc)をサインにしています。相談者本人が実は周囲を困らせているという場合もあるので、全体を見た上で顔の曇っている人がいないか判断するようにしています。

池原:顔が曇っている人への働きかけはどんなことをするのか?

勅使川原:著書内の警備員さんの例のように、本人、その上司と話をした後に、双方が考えている合理性を引き出して、受け止めます。その後に、お互いの考えをテーブルに並べてすり合わせてもらっています。どちらもお互いに正しいということを認め合い、どのような姿になっていくべきかを話し合う場を作っています。

池原:そのお話から「木に学べ 法隆寺・薬師寺の美」で紹介されている適所適材の意味を連想しました。その本に出てくる宮大工の方は、それぞれの木の性質を把握した上で、配置や関係を決めていくことで、全ての木を活かすというお話でしたが、同じことを勅使川原さんの著書内の事例からも感じました。

勅使川原:日の当たらない場所で細く生えた木など、どんな木にも意味がありますよね。今の能力開発の場では、全員がまっすぐで、太くて強い木になることを推奨しようとしている気がしています。

勅使川原:1on1の対話を学校等でも是非広めてほしい。その秘訣は?

池原:「対話の技術」の先に見えるその先の世界観を共有していくことが大切。多様な人々が話し合いの場にいて、健全なコンフリクトがあって、その結果新しい何かが生み出される社会というのはとても大事だと思います。それを実現するための対話であり、会話であり、技術ということを伝えるべきではないでしょうか。

勅使川原:コンサル会社の若手社員から、「関係性」をソリューションとして扱うには変数、解が多すぎるため、扱いきれないという話もありました。広めることの難しさを感じます。

池原:関係性を築くことには明確な解がないですからね。方程式・仕組み化できない考えをどう広めていくか?キャリア1on1の対話を通してセルフ→チーム→組織→社会と少しづつ考え方を広めていくのも有効ですが、影響力のあるアンバサダーを社内に置くのも良いかも。社内・社外メンターを作って広めていく活動にも会社として注力しています。

♦︎ ご参加者より、対談者へ質問

ご参加頂いた方から、それぞれに聞きたいこと、また2人に聞いてみたいことが多数寄せられました。ここでは、当日された質問と回答の中から、ピックアップしてご紹介します。

ー今に焦点を当てて生きつつ、未来を見据えスキルを高める。マインドの切り替え方法は?

勅使川原:自分の置かれている状況を俯瞰してみる(幽体離脱する)ことが、自分の今進むべき道を選ぶ原点になるのではないかと思います。

ー子育てをしながら女性管理職として勤務しており、激務。昭和スタイルからの脱却方法は?

池原:大変な姿が目に浮かびます。まずは何を変えるべきかを特定し、次に変えられること、変えられないことを振り分け、前者から手を付けていくと良いと思います。急に全てが解決することはないので、できることから1歩ずつ変えていきましょう。応援しています。

ーお二人が目指す理想の未来とは?誰がどのように働く姿が理想?

勅使川原:人が動くと書いて働く。今イメージされる仕事だけでなく、家事・育児・介護含め全てが大事な仕事と認識される世の中であってほしいです。人を選ぶのではなく、今ここにある状態をセレブレートできる、またそれぞれの特性を組み合わせて新しい景色を見ていこうという発想が当たり前に出来、体現できる社会が理想ですね。

池原:それぞれが色々な事情を抱えて働いていますよね。そのような状態でも、自分の存在意義を感じながら、誰かと関わり合い、新しいものを生み出していける社会を望んでいます。色々な制約があったとしても、自分の持っているものを発揮できる社会であってほしいです。

勅使川原:モヤモヤはあるという前提で、いかに共存しながらマネージメントしていくかが大事ですね。曇りのないものを求めるのは難しい。「幸せ」の定義をリニューアルするのも良いかもしれないと感じました。

ー対話の中で自分の考えを通すのと、相手の考えに合わせるバランスはどう調整する?

池原:言葉の裏に意図があり、意図の裏に価値観がある。なので、相手の意図を受け止めた上で、相手を観察する。それから、自分の意見を言ってよいか聞いた上で伝える、相手の話を聞く…という対話をしていけると良いのではないでしょうか。

勅使川原:1on1の教科書に沢山ヒントがありましたよね。今の心の状態をありのまま伝えるのも良いと思います。不完全な者同士、不完全な会話を楽しめると良いですね。

♦︎ まとめ

沢山の質問に対して、それぞれの知見や経験を元に鋭く、具体的に回答していく姿が印象的だった今回の対談。特に、2人が語ってくれた理想の未来については、思わず頷いてしまう方も多かったのではないでしょうか。モヤモヤへの向き合い方や、それぞれの職場で活かせるヒントを沢山持ち帰って頂けたと思います。

池原の著書「女性部下・後輩をもつ人のための『1on1の教科書』」(日本実業出版社)と勅使川原 真衣氏の著書「『能力』の生きづらさをほぐす」をぜひ職場の皆様と一緒に手にとってい頂き、対話のきっかけにしてみてくださいね。